『安彦良和対談集 アニメ・マンガ・戦争』 2
評論家の松本健一さんとの対談は安彦さんが一番望んでいた対談のようで、非常に熱が入っています。松本さんの本はほとんど読んだことがないんですが、この対談を読む限りでは今の民主党の主張にかなり近いような感じです。しかし、小泉政権時代にそのブレーンをやっていたのではないかと安彦さんが疑っていたような面もあり(この対談が行われたのは小泉首相の時代)、まあ割合バランスの良い思想を持つ方と言えるでしょう。
ぼくは歴史がからっきしダメで、専門的な話には「へえーそうなんだ」と思うしかないんですが、現代政治の話ではいろいろ興味深いところがあります。
松本 今の時代は、二大政党時代をつくろうというのがトレンドになってきたんだけれども、しかし二大政党時代にどういう問題が起きてたかというと、戦前の民政党と政友会の足の引っ張り合いでスキャンダル合戦になっていく。そんな争いしてるんなら清く正しい軍部が代わりになりますよっていうのが軍部独走につながっていったんですけど、今は軍部がないから、それがマスコミになっているんですね。(中略)そのマスコミ権力に乗じようとするのが、ポピュリスト、つまり大衆迎合のうまい政治家ですね。
二大政党制が必ずしも理想的政治の土台ではないことをちゃんと指摘しているのは見識だと思います。テレビに登場するコメンテーターという下劣な連中とは大きな違いがありますね。
しかし、安彦さんは「なぜ日本はアメリカに対等に物申すことはできないんだ」というようなことを言い、松本さんは「東アジア共同体的なものがあるべきなんだろう」というような構想を持つわけなんですが、日本が独自防衛力を持たなければ対等な関係はないだろうとぼくは単純に思いますけど間違ってるんでしょうか?
マンガ編では羽仁未央さん。羽仁さんといえば、昔の典型的進歩的文化人である羽仁進氏の娘で、羽仁進氏の方針で学校に行かされず、究極の進歩的教育として親の自宅教育で育てられたことで有名ですけど、今ではアジアに日本のマンガやアニメなどを紹介したりする仕事もしているんですね(笑)。
それから、寺田克也さん。
寺田 なまじ上手いとつまらなかったりしますからね。小学生の時、友だち同士で似顔絵とかを描くと、俺のは似てるんですよ。でも、友達に佐野って奴がいて、彼が描くとぜんぜん似てないんですけど、特徴は捉えていてめちゃめちゃ面白い訳ですよ。僕の場合どうしてもデッサンに捕らわれて、似せようとして描いているんで、中途半端に似た似顔絵になって、全然面白がられない訳ですよ。「上手いね」とはいうんだけど、笑ってくれない。
これは安彦批判みたいになってますが、寺田さんにとって素直な気持ちを表した体験談でしょうね。ぼくもそうですし、絵を描く人はいろんな形で似たような気持ちを体験したことがあるのではないでしょうか。絵の上手下手が気になるのは絵を描く人だけで、一般的には上手いより面白いもののほうがいい、というのは絵を描く子供にとって「認めたくないものだな…」というものだと思います。
その割に、アニメのキャラがちょっとでも違うと「作画崩壊だ!」と騒いでみたり。絵を描かない人というのはなかなか理解ができない難しい人種です。
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